動画投稿サイトやSNSにアップロードした動画が多くの人に共有・拡散され「バズる」と、その動画はさまざまな人の目に留まることになります。そのため、自社を認知してもらうために動画を投稿する企業もありますが、動画をバズらせるためには押さえるべきポイントがあります。
今回は、SNSや動画投稿サイトで一気に拡散されるバズる動画の共通点について解説しながら、バズった動画の事例やバズる動画を制作するためのコツを紹介します。
大きな話題を呼ぶ『バズる』動画とは?
バズるという言葉は聞いたことがあっても、「バズ」の定義を説明できる人は少ないのではないでしょうか。バズる動画を制作するために、まずはバズの語源について詳しく見ていきましょう。
そもそも『バズる』とは?
バズはポジティブなことがSNSで話題になることを指す、新しい言葉です。語源は諸説ありますが「がやがや言う」「噂になる」などを意味する英単語「Buzz」に由来するともいわれます。
もともとはネットスラング※1)的な言葉でしたが、最近はマーケティング用語の1つとして使用されるようになっています。
その理由は、スマートフォンが爆発的に普及し、SNSでバズることが大きな利益につながることが判明したからです。そのため、いかにしてバズらせるかを分析する「バズ・マーケティング」が生まれ、その研究やマーケティング手法の確立が進んでいます。
※1)ネットで使用される用語
バズるのは難しい?
バズ・マーケティングは新しいマーケティング手法で、多くの人が研究・分析しており、バズる動画には、特徴やポイントがあることがわかっています。しかし、不特定多数の人に拡散してもらうことが前提となるため、運やタイミングといった不確定要素も絡みます。そのため、「確実にバズらせる」ことは難しいのが現状です。
バズは、ネガティブに拡散されていく炎上と紙一重でもあります。バズるためのポイントを押さえた動画でも、予期せぬ面が注目されて炎上することもあるのです。
バズる動画に共通する法則って?
SNSが普及してから10年近く経ちます。バズる動画には法則性やポイントがあるといわれています。ここでは、一般的にバズるために必要とされる要素を紹介します。
最新情報を公開している
バズる動画のポイントの1つに、「新しい情報」であることが挙げられます。新しい情報というのは、誰も知らない最新情報だけではありません。今まで見たことのない新しいタイプの映像や、新しい撮影手法で撮られた動画なども含みます。言い換えるのであれば「目新しい動画」といえるでしょう。
逆に既視感のある映像や、周知の事実をまとめただけの映像はバズりにくいといえます。例えば、YouTubeでコーラにメントスを入れる動画の中には、再生回数が1億を超えるものもあります。しかし、すでに多くの人が投稿しているため、同じような内容の動画を投稿してもあまり視聴されない可能性が高いでしょう。
バズるためには、誰もやったことがない内容の動画をいち早く投稿することが大切です。
ギャップや意外性がある
ギャップや意外性がある情報は、バズりやすいといえます。ここでいうギャップや意外性とは、多くの人が知っている情報と目にした情報の差のことです。この差が大きいほど、バズる可能性が高くなります。
例えば、歴史が長く真面目な社風で有名な企業が突如コミカルな動画を投稿した場合、企業のイメージと動画のギャップに多くの人が驚くでしょう。そのギャップが面白いと感じる人が多ければ、拡散されてバズる可能性が高くなります。
また、多くの人が知っている情報や普段目にする動画と違う、意外な内容やタイトルの動画も目に留まりやすく、拡散されやすいといえるでしょう。
応援したくなる・共感を呼ぶ動画
バズるポイントは、個人が情報を発信できるSNSで多くの人に「この情報を他の人に知らせたい」と思わせることも大切です。そのため感情に訴えかける動画、特に応援したくなるような内容や共感を呼ぶ内容の動画はバズる可能性が高いといえます。
しかし、感情に訴えかける動画をバズ目的で制作すると、視聴者に「拡散してほしい」という下心が見えてしまうおそれがあり、その場合は視聴者が離れてしまいます。バズらないどころか、逆に炎上することもあるでしょう。応援や共感は視聴者の感情に訴えかけるだけに、動画の要素としては難しいといえます。
広告色が薄いこと
企業が発信しバズった動画は、広告色が薄い傾向があります。中には広告色が強い動画にもかかわらずバズったものもありますが、そのような動画は広告内容より映像のインパクトが強かったり、広告自体にストーリー性があったため共感を呼んだりした動画です。
広告を目的として動画を制作するとPRや説明が多くなりがちですが、バズを狙うのであれば視聴者を楽しませることを意識して制作する必要があります。
SNSでは、個人の投稿と企業の投稿が一緒に表示されます。個人の投稿の間に広告色が強い企業の動画が挟まった場合は、見てもらえない可能性が高いでしょう。視聴者が純粋に動画の内容を楽しめることを意識して、制作することが大切です。
話題性のあるテーマや議論を呼ぶテーマ
SNSは、個人が自由に情報を発信できるツールです。そのため、話題性のある動画や議論を呼ぶような内容の動画は、視聴した人が動画に対し自分の意見を加えて拡散する可能性が高いといえます。また、その意見がさらに別の議論を生み、結果的にバズることもあります。
しかし、賛否が大きく分かれる議論や、政治やジェンダーといったデリケートなテーマを扱った動画は、視聴者の受け取り方次第で大炎上につながることがあります。意図的に炎上を狙う場合や、考えてもらうことが目的であれば問題ありませんが、基本的にバズ動画を制作する際は、ポジティブな意見が多いテーマにすることが最善だといえます。
また、多くの人が議論を楽しめる内容かどうか、動画を精査することも大切です。
動画をバズらせるために重要なこととは?
バズ動画は慎重に制作しなければ炎上につながるため、内製が非常に難しい動画といえます。また、一般的な広告動画と性質が大きく異なるため、制作会社に依頼する前の企画段階から気をつけるべきポイントがたくさんあります。
ここでは、バズらせる動画を企画・制作する際の注意点を紹介します。
短い時間でインパクトを伝える
多くの情報が飛び交うインターネットでは、1つの動画を長時間視聴する人は多くありません。動画サイトのホーム画面では多くの動画が表示されており、興味がない場合はすぐに他の動画へ移ることができます。5秒ほどたつと広告をスキップできる動画投稿サイトもあり、長い広告動画はあまり視聴されません。
そのため、バズることを狙う場合は開始から5秒以内に視聴者の興味を惹く必要があります。また、一度興味を惹いたら途中で離脱されないようにしなければなりません。
SNSや動画投稿サイトにアップロードする動画は、バズるための要素を入れる前に、インパクトが強く、要点がまとまった動画になるように企画することが大切です。
動画単体でも楽しめるようにする
SNSにおいて、企業の動画は個人の投稿に混ざって表示されるため、個人の投稿と同じように動画単体でも楽しめるものを制作する必要があります。
言い換えれば「広告としてどのように伝えるか」ではなく、「いかにして面白いと感じてもらえるか」がバズる動画を制作するコツです。
また、SNSや動画投稿サイトにアップロードする場合は、短い動画にしなくてはなりません。エンターティメント性が求められるだけでなく、短時間という制約もあるため、伝えられることが限られます。そのため、企画段階で何を伝えたいのかを明確にする必要があるのです。
作っただけで終わらせない
作った動画をSNSやYouTubeに投稿しただけで終わっている、そもそもアカウントを作っただけで終わっているといった企業も多いのではないでしょうか。SNSでは時間とともに過去の投稿が埋もれていくため、動画をバズらせたいのであれば、SNSをしっかり運用するといった動画制作以外の努力も必要です。
SNS運用の具体例としては、埋もれないように動画を紹介する投稿を繰り返して露出を増やす、SNSで多くの支持者を集めて、さらに影響力のあるインフルエンサーと協業するといった活動が挙げられます。
投稿後いきなりバズるということは、ほとんどないでしょう。地道にSNSや動画投稿サイトのアカウントを成長させていくといった、長期的視点での運用が求められます。
バズっている動画の制作事例
バズる動画の企画・制作するためには、SNSや動画投稿サイトでバズった動画を研究する必要があります。ここでは、話題になった動画を紹介しながらバズった理由を解説します。どのような動画がバズるのか、見てみましょう。
auペイメント株式会社:ウェブマネーWEBCM(PROOX制作動画)
ネット決算サービスで有名なウェブマネーを運営するauペイメント株式会社様の動画は、シナリオが面白いことで話題になりました。
知名度が高いウェブマネーに対し、チャージも可能なWebMoneyプリペイドカードの認知度が低いという状況を、自虐的かつユーモアあふれるストーリーに仕上げているのが特徴です。
サービスの説明は少ないものの、カードが露出することでサービスの内容がすぐにわかります。また、動画サムネイルにインパクトのあるシーンを用いることで、クリックされやすい動画になっています。
TSUTAYA:TSUTAYA DISCAS TVプロモーション映像(PROOX制作動画)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社様が運営する、ビデオレンタルサービスを行うTSUTAYA様の動画では、日本最大級の在庫を誇るサービスであることをアピールするために、2万枚のDVDジャケットが人間の顔に変化して話し出す、というインパクトの強い動画です。
離脱や広告スキップが起こりやすい5秒目に、DVDパッケージがいきなり動き出すことで視聴者を引き付けているのがポイントです。その後もDVDパッケージが動き続けることで、思わず最後まで見てしまう動画になっています。
ジャパンネット銀行:誕生月性格診断_バズ動画(PROOX制作動画)
動画投稿サイトやSNSを使用する若年層へのアピールを目的に、PayPay銀行株式会社様(旧株式会社ジャパンネット銀行)の動画を制作しました。
動画の開始直後に「誕生月性格診断」という若年層が興味を持ちそうなキャッチーな単語を表示させることで、視聴者に興味を持たせています。広告色が非常に薄いのが特徴で、キャッチコピーである「はじめてのネット銀行」と会社名は、2分の動画の最後にしか出てきません。
しかし、1月から12月までの性格診断で興味を引き続け、最後にキャッチコピーと会社名を自然に入れることで、広告として成立しています。
ビーウィズ:ANNIM広告映像(PROOX制作動画)
カスタマーサービスおよびBPOサービスを中心に展開する、ビーウィズ株式会社様の請求書読み取りサービス「ANNIM」の広告映像です。
こちらはWeb向けのバズ動画ではなくタクシー車内向けの広告なので、バズ動画に比べると広告色が強めの動画になっていますが、タクシーの車内という音が聞こえにくい状況でも楽しめる工夫がなされています。これは、音を出せない環境で視聴されることもあるバズ動画を制作するうえで、非常に参考になります。
また、大量の紙を使用した演出や、エフェクトを多用してインパクトを持たせることで、視聴者の記憶に残りやすくしています。
動画をバズらせて知名度を高めよう
SNSで動画をバズらせることができれば、少ない費用で大きな広告効果を得られます。最近ではバズ・マーケティングの研究が進んでいるため、ポイントを押さえれば意図的にバズる動画を制作することも可能です。
しかし、バズることを目的にすると、もともとの課題を解決できなくなるおそれがあります。本質を見失ってしまうと、何のために動画を制作するのか、視聴者に伝えたいことが伝わらないでしょう。バズる動画を企画する際はまず制作会社に相談することが成功への近道になります。