企業の紹介動画は制作面が注目されがちですが、動画は見てもらってこそ意味があります。WebサイトのマーケティングではSEO対策が広く知られていますが、実は動画サイトでも検索結果の中から上位表示を目指すVSEO(Video SEO)という対策が注目されています。
VSEOを行っている企業はまだ少ないため、先に始めることで動画の露出を増やし、企業や商品・サービスの認知度向上を図れるでしょう。
本記事では、VSEOの考え方や基本的な施策について解説します。
VSEOとはどんなもの?普通のSEOとは何が違う?
VSEOは最近できた用語なので、イメージが湧かない方も多いでしょう。まずは、VSEOの定義やWebサイトのSEOとの違いを紹介します。
VSEOとは?
VSEOとは、キーワード検索の結果、特定の動画がより上位に表示されるようにするために行う施策や手法のことです。
具体的には、
- YouTubeなどの動画サイト内の検索結果
- Googleなどの検索エンジンでの検索結果
における上位表示を目的に実施します。
一般的なSEOでは、検索エンジンにおけるキーワード検索結果で上位表示を目指します。しかし現在のGoogle検索では、検索結果一覧にYouTube動画も表示されており、そこで上位表示を目指すのがVSEOです。さらにVSEOでは、動画サイト内でのキーワード検索でも上位表示を目指します。
VSEOが重要な理由
VSEOが重要な理由は、以下のとおりです。
動画コンテンツが広く普及し、さらに加速することが予想されるから
動画コンテンツの数や再生時間は増加しており、今後も成長が見込まれます。成長している市場でVSEOを重視することにより、動画を多くの視聴者に向けてリーチさせることができるでしょう。その結果、商品やサービスの認知度を向上させることが可能です。
動画は見てもらえなければ意味がないから
どれほど素晴らしい動画コンテンツを制作しても、見てもらえなければ存在しないのと同じです。良質な動画が埋もれることを防ぎ、制作にかかったコストや時間を事業の成果につなげることが大切です。
VSEOは競合が少ないから
2021年12月現在、積極的にVSEOを行っている企業は多くありません。特にGoogleやYahoo!といった一般的な検索エンジンで上位表示を目指す場合、競合が少ないため効果が高くなります。
VSEOを行うことで得られること
VSEOを行うと、以下のような変化が起こります。VSEOの効果が出るまでは少し時間がかかりますが、多くのメリットがあるため早めにスタートすることをおすすめします。
YouTubeの検索結果で上位表示される
検索結果で上位表示されることにより、動画で紹介している商品・サービスなどの認知度向上が期待できます。認知度が高まれば、事業の成果にもポジティブな影響があるでしょう。
動画の再生回数が増加する
動画の再生回数が増加するため、さらに注目されやすくなります。うまくいけば「再生回数が多いから気になる」という好循環が生まれるでしょう。
拡散力が高まる、事業の成果に繫がる
視聴者の行動を促すように制作された動画は、チャンネル登録やWebサイトへの遷移、SNSでの拡散などの行動を生み出し、事業の成果につながります。
コスパがよく、高い費用対効果が期待できる
VSEOはノウハウが求められますが、追加コストが発生することはあまりありません。広告やセールスの手法としてはコストパフォーマンスがよく、費用対効果が高いといえます。
VSEOによって見込める効果
VSEOによって動画の露出を増やし、認知度や再生数を向上させることができます。VSEOを実施することで得られる具体的な効果を見てみましょう。
動画サイト内の検索エンジンにおける上位表示
VSEOを実施すると、動画サイト内の検索エンジンで上位表示されるようになります。動画を検索する際に動画サイト内の検索機能を使う人が多いため、そこで上位になるほど見てもらいやすくなります。ただし通常のSEOと同じく、上位表示だけで終わらずに動画を視聴してもらうことが大切です。
関連動画としての露出アップ
タイトルや説明文、タグなどにVSEO対策を施すことで、他の動画の視聴者に対して関連動画としておすすめに表示されやすくなります。関連動画であれば、企業や商品・サービスの認知度が低い場合でも流入が期待できるため、再生数の増加につながりやすいです。多くの再生数や登録者を誇る動画の関連動画として表示されると、アクセスが急増することも珍しくありません。
一般的な検索エンジンにおける上位表示
GoogleやYahoo!といった一般的な検索エンジンのサイト結果や動画検索結果で、自分の動画が上位に表示されるようになります。Googleのサイト検索では、動画は一般サイトより上に表示されるため、普段は動画サイトを利用していない人にもリーチできます。その結果、検索エンジン経由で動画ページへの流入が増え、再生数やチャンネル登録数も増えていきます。
動画再生数・チャンネル登録数・インプレッションなどの増加
VSEOによって上位表示された結果、動画の再生数やチャンネル登録数が増加し、サイトへの訪問や問い合わせ、販売といった事業上の目的達成に近づきます。再生数やチャンネル登録数だけでなく、コメントやシェア、「いいね」といったアクションが増えれば動画の評価が高まるため、さらに流入や再生数、登録者数が増えるという好循環が生まれます。
【企画・マーケティング編】VSEOの方法
VSEOは、動画制作と企画・マーケティングの両面で行います。企画・マーケティングはWebサイトのSEO対策に似ているため、取り組みやすいでしょう。こちらでは、企画・マーケティングの分野で取り組むべきVSEOについて解説します。
目的・ターゲットを明確にする
VSEOを始めるにあたって最初に決めるべきことは、動画の目的とターゲットです。目的とターゲットが明確になっていれば、キーワードや動画の方向性は自然に決まります。
年齢や性別などを絞り込み、ペルソナを作って具体的な行動を想像し、検索されそうなキーワードを考えましょう。
また、動画の成果指標もしっかり定めておくことが大切です。「再生数よりもチャンネル登録数」「商品サイトへの流入数」など、動画の目的に合った成果指標を設定することで、動画制作の方針にブレが少なくなります。
タイトル、説明文の設定
WebサイトのSEOでは、検索エンジンに表示されるタイトルの文字数が28~32文字なので、その文字数に収まるタイトルを考えるのが一般的です。
VSEOでもタイトルの文字数は同様に考えますが、表示される文字数は変わることがあるので注意が必要です。タイトルが見切れる可能性も考慮し、動画の内容を表すキーワードは最初の20文字以内に入れておくとよいでしょう。
また、動画の説明文に検索キーワードを入れておくことで、検索で上位表示されやすくなり、関連動画としての露出が増えます。
タグ、ハッシュタグの設定
VSEOでは、タグやハッシュタグも重要です。動画サイトによってタグ・ハッシュタグの意味合いや設定方法は異なりますが、検索結果や動画の関連付けに影響すると考えられています。
動画に関連する効果的なタグ・ハッシュタグは、露出増加に有効です。キーワードだけでなくチャンネル名もハッシュタグとして使うと、チャンネルの認知度も高まります。ただしタグ・ハッシュタグが多すぎると、視聴者に向けて訴求したいことがぼやけるため注意しましょう。
SNS連携
もはや、SNSはWebマーケティングにおいて重要なツールになっています。VSEOにおいても、評価に対して何らかの影響があると考えられています。SNSは動画への誘導だけでなく、情報発信やファンとのコミュニケーションなど多くの用途があるので、うまく活用しましょう。
総務省の調査によると、10~20代はSNSの利用時間がブログやWebサイトの利用時間よりも長いそうです。そのため、コンテンツによってはSNSでのマーケティングを強化することが、VSEOへの近道になる可能性があります。
引用:総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
SNSは情報の拡散力が高く、リーチが大きく広がるというメリットもあります。ハッシュタグと組み合わせて、動画だけでなくチャンネルの認知度向上も目指しましょう。
【制作編】VSEOの方法
制作サイドが行うVSEOには、動画そのものはもちろん、動画サイトのページの情報も入手する必要があります。ここからは、制作サイドで行うべきVSEOの手法を解説します。
サムネイルの作成
サムネイルとは検索結果に表示される、本でいえば表紙にあたる画像のことです。YouTubeでは設定しないとサムネイルが自動的に生成されますが、サムネイルは「動画の表紙」であることから、動画の内容や雰囲気が伝わるようなものを制作サイドで用意しましょう。
サムネイルの作成には、いくつかポイントがあります。例えば、検索結果や関連動画の表示では、サムネイルは縮小されて表示されることが多いため、文字は見やすいフォントやサイズ、色を使うべきです。サムネイルは動画のブランディングにおいても重要なので、訴求力のあるサムネイルになるよう、構成やテキストは案を練って作成しましょう。
字幕・タイムスタンプテキストを入れる
YouTubeの検索結果上位に表示される動画の共通点は、字幕(テロップ)が入っているものが多いです。検索エンジンはテキスト情報を解析するため、動画の情報として字幕のテキストを取得している可能性は高いといえます。
YouTubeクリエイターアカデミーによると、チャンネルの再生回数のうち3分の2は海外の視聴者によるものだそうです。そのため、ジャンルによっては外国語の字幕も入れておくと外国人による視聴も期待できます。
さらに、動画内にタイムスタンプ(チャプター)を埋め込むことも大切です。タイムスタンプは、時間で区切った目次と考えるとわかりやすいでしょう。タイプスタンプはテキスト情報なので、適切なキーワードが入っていれば検索エンジンからの評価が高まります。タイムスタンプのテキストはGoogle検索の結果にも表示されるため、ターゲットの興味を引くテキストを設定しましょう。
動画の最後にアクションを促す仕組みを入れる
企業で制作する動画のゴールは再生ではなく、視聴者に企業側が期待するアクションを起こしてもらうことです。そのため、動画内や動画コンテンツが表示されるページにお問い合わせボタンなどの仕組みを用意しておきましょう。特に、動画の最後には必ず入れるべきです。
動画の最後に「チャンネル登録をお願いします」「続きは商品のWebサイトをチェック」と入れておくと、動画を見て共感を得た人がそれらのアクションを起こしやすくなります。
YouTubeでは、動画の右下にチャンネル登録用のボタン(透かしアイコン)を設定することができます。なるべく目立つように作成し、動画内でボタンがあることを案内するとよいでしょう。
また、動画の説明ページに企業や商品・サービスのURL、SNSへのリンクなどがあれば、ユーザーが次の行動を起こしやすくなります。動画の内容や質ももちろん大切ですが、動画を見た後にワンクリックで目的のページにアクセスできるようにするのが、コンバージョンを高めるコツです。
VSEOを実施して動画マーケティングを成功させよう
動画コンテンツを制作・配信している企業でも、VSEOを意識している企業は多くありません。VSEOは効果が出るまで時間がかかりますが、だからこそ先行することで競合に差をつけることができます。
VSEOではターゲティングやキーワード選定などのノウハウが必要になるため、ノウハウがない場合は制作会社に依頼することをおすすめします。
VSEOで動画の上位表示を狙い、動画マーケティングの成果を上げることを目指しましょう。