近年、多数の企業で取り組まれている「インナーブランディング」という活動をご存じでしょうか。インナーブランディングとは、社内に対して企業の価値観などを知ってもらう活動のことです。
今回はインナーブランディングを検討している企業の広報担当者の方に向けて、インナーブランディングの概要や事例に加えて、より効果を発揮する「インナーブランディング動画」について詳しく解説します。
目次
インナーブランディングとは?
一般的にブランディング(エクスターナルブランディング)とは、企業が提供する商品やサービスなどのブランド構築を指します。一方でインナーブランディングは、文字通り「内部」に向けたブランディング活動です。
インナーブランディングの事例を紹介する前に、両者の違いを確認しておきましょう。
(エクスターナル)ブランディングとは?
「エクスターナルブランディング」は一般的に知られているブランディング活動を指し、特にインナーブランディングと対比する際に使われます。これまでは単に「ブランディング」と呼ばれていましたが、インナーブランディングが登場したため、両者を区別するためにエクスターナルブランディングと呼ばれるようになりました。
従来のブランディングは、消費者や取引先の企業などをターゲットに対し、提供する製品やサービスの価値を高める活動です。
一方でインナーブランディングのターゲットは従業員であり、企業理念や企業価値を従業員に理解してもらい、仕事に対する意識やパフォーマンスの向上を目的としています。
インナーブランディング動画とは
企業の理念や価値観を従業員に伝えるインナーブランディング活動には、社内報や記念イベントなどがあります。最近ではこれらに加え、イベントなどで使用するためのインナーブランディング動画を制作する企業が増えています。
インナーブランディング動画を制作する企業が増えている理由は、文章や言葉ではインナーブランディングにおいて重要な企業の理念や価値観などを伝えるのが難しいからです。それらを少しでも理解しやすくするために、映像と音声で情報を伝えられる動画を制作する企業が増えています。
インナーブランディング動画には、社内SNSやポータルサイトで都合の良い時間に何度でも視聴できるという特徴があります。
インナーブランディング動画を制作するメリット
インナーブランディング動画には、企業の理念や価値観が従業員に伝わることで、業務に対する意識やパフォーマンスが向上するメリットがあるといわれています。
従業員のモチベーションを引き出せる
インナーブランディング動画を視聴し、普段は確認することが難しい商品やサービスの強み、企業理念、会社のビジョンなどを知ることで、従業員のモチベーションを引き出せます。
例えば、普段は消費者が自社の商品やサービスを利用している姿を見ることができない従業員が動画を視聴することで、実際に利用されるシーンや消費者の様子を知ることができ、モチベーションに繋がるかもしれません。
また、普段は従業員との接点があまりない経営陣がインナーブランディング動画に出演し、理念やビジョンを伝えることで、それらを従業員と共有することも可能です。従業員が企業で担っている役割や今後のビジョンを把握することは、生産性向上や離職率低下につながるといわれています。
従業員を採用しやすくなる
近年はQOL(※1)の考え方や仕事観が多様化したこともあり、企業理念を重視する人が増えています。特に就職活動を行う20代の学生は、企業の理念やビジョンを重視する傾向が強いというデータもあります。
引用元:株式会社学情様 企業のビジョン・パーパス(存在意義)
(※1)Quality of Lifeの略称であり、生活の質のこと
そのため、インナーブランディング動画を制作し、企業の理念やビジョンを明確にすることは、従業員の採用にも効果を発揮します。社員全体に企業の理念やビジョンが浸透することは、入社後のミスマッチの予防にもつながるでしょう。
エクスターナルブランディングにもつながる
インナーブランディング動画を制作し、企業理念やビジョンを明確にすることは、エクスターナルブランディングにもつながります。質の高い動画を制作し、社外に向けて発信することで、エクスターナルブランディングの効果も期待できるからです。実際に、インナーブランディング用で作られた動画の多くは社外に向けても発信されています。
これまでは、エクスターナルブランディング活動において企業の理念やビジョンは、商品やサービスの価値向上に関わることが少ないとされていました。
しかし、近年は企業自体に好感を持ってもらい、企業自体をブランド化することで、ライバルとの差別化を図る企業も増えています。企業の理念やビジョンが従業員に浸透することで業務の質が向上するため、企業のブランド力の向上にもつながるでしょう。
短時間で確実に浸透する
企業の理念やビジョンの共有といったインナーブランディング活動は売上や利益に直結しないため、多くの時間を割くことが難しいとされています。
また、企業の理念やビジョンはあくまでも「概念」であるため理解が難しく、熱意が伝わりにくい社内報などの文章や、時間的制約がある経営陣の講話、朝礼などの口頭説明で社内に浸透させることは簡単ではありません。
しかし、視覚と聴覚の両方に訴えられる動画であれば、素早く確実にインナーブランディングが可能です。インナーブランディング動画は従業員が都合の良いタイミングで視聴できるだけでなく、繰り返し視聴できることも大きなメリットといえます。
インナーブランディング動画の種類と活用シーン
インナーブランディング動画の種類は、大きく分けて3種類あります。ここでは種類別の活用事例を紹介します。
理念・クレド動画
代表的なインナーブランディング動画に、企業理念やクレドを紹介する動画があります。特に、企業理念をより具体的かつ実践的な行動規範に落とし込んだクレドを紹介する動画は、従業員のモチベーションアップやインナーブランディングに効果的です。
株式会社ショーケース・ティービー様にて制作した動画は、時間の流れから実際に働く社員の声を流す動画構成にしました。社員と取引先の謝恩パーティーで放映されたこの動画は、企業理念とともに社員のメッセージをテンポ良く紹介することで、企業理念をわかりやすく伝えています。
研修・セミナー動画
企業で行われる研修・セミナーは、インナーブランディングに最適な場面の一つです。単なる研修やセミナーとして終わらせるのではなく、それらを行う目的を同時に説明することで、従業員に対するインナーブランディングができます。インナーブランディングを同時に行うことで、セミナーや研修の受講に対する積極性が高まるというメリットもあります。
株式会社クリッククローバー様の動画は、属人化しやすい業務マニュアルを動画で表現することで、講師の負担を軽減しました。また、人的コストだけでなく、マニュアルの標準化に成功しています。
社内イベント用動画
社内の記念イベントやレクリエーションの際に流すイベント用の動画に、インナーブランディングの要素を盛り込むのも効果があります。イベントが盛り上がることで従業員としての共存意識が高まりやすく、その際にインナーブランディングを行えば、従業員のモチベーション向上が期待できるでしょう。
近年はイベントがオンラインで開催されるケースが多く、従業員のモチベーションや企業に対する愛着・忠誠を維持するのが難しくなっているため、イベントでインナーブランディングを行い、企業理念を自分ごと化させることの重要性が高まっています。
インナーブランディング動画の制作ポイント
インナーブランディングで企業の理念やビジョンが浸透すると従業員のモチベーションや意識の向上が見込めますが、動画制作の際に押さえるべきポイントを間違えると逆効果になることもあります。そこで、動画制作の際のポイントを確認しておきましょう。
ブランディングを行う理念をはっきりさせる
インナーブランディング動画を制作する際に重要なのは、ブランディングを行う理念をはっきりさせることです。
ブランディングする理念が曖昧だとブランディングから乖離した、何を伝えたいのかよくわからない動画になってしまいます。「従業員にどのような理念を浸透させたいのか」を明確にしたうえで、動画を制作しましょう。
従業員からの共感を重視する
インナーブランディングでは、従業員に理念を自分ごと化させることも重要です。従業員が理念やビジョンに共感し、モチベーションや意識を高め、それを業務に反映することでインナーブランディングが成功します。
従業員が理念に共感しない場合は、逆に会社に対して不信感を抱いたり、反発したりすることもあるでしょう。インナーブランディング動画を制作する際は、「押し付けがましい内容になっていないか」「従業員が共感できる内容になっているか」を確認しましょう。
動画としてのクオリティをおろそかにしない
インナーブランディング動画で重要なのは従業員に共感してもらうことなので、高いクオリティが求められます。「高いクオリティ」には動画の「演出」だけなく、「内容を理解しやすい」「共感してもらいやすい」といった動画の「内容」のクオリティも含まれます。
クオリティが低いとインナーブランディングとして成り立たないだけでなく、従業員のモチベーションを下げる結果になりかねません。
継続的に実施する
抽象的な理念やビジョンは従業員に伝わりにくいため、浸透に時間がかかります。インナーブランディングは、企業理念が浸透することによって社風や職場の雰囲気を変える試みなので、1回限りではなく中長期的かつ継続的に実施することが大切です。
単に制作を続けるのではなく、動画が何をどのように変えたかを確認することも重要です。動画の制作前と制作後に従業員アンケートをとって意識調査を行うなど、定量的な数値をもってPDCAを回すことで、インナーブランディングの取り組みがより確実なものとなるでしょう。
社員のマインドが変わる!インナーブランディング動画の事例3選
ここでは、実際に制作されたインナーブランディング動画を3つ紹介しますので、制作する際の参考にしてください。
雪印メグミルク株式会社様:企業憲章浸透動画(PROOX制作動画)
乳製品メーカーの雪印メグミルク株式会社様の動画では、企業憲章の浸透を目的に制作しました。企業憲章は一般的に企業が守るべき事柄や経営理念をまとめたものですが、「憲章」という言葉にはやや堅苦しいイメージがあります。
しかし、この動画では、アニメーションを交えながら企業理念や生まれた背景を紹介することで、従業員が堅苦しさを感じないようにしました。また社長のインタビューを挟むことで、社長の「想い」が直接従業員へ伝わる内容になっています。
株式会社ONE COMPATH様:理念浸透映像(PROOX制作動画)
地図検索サービスなどの電子メディアを提供する株式会社ONE COMPATH様の動画では、企業理念の浸透を目的にインナーブランディング動画を制作しました。
アニメーションを使用し、簡潔かつストレートに企業理念を伝えているのが特徴で、会社が掲げる「ワンマイル・イノベーション・カンパニー」という理念を3分で理解できます。
ストレートかつ簡素にまとめることで、理念をよく理解している人の割合が2.5倍に増加し、社内の企業理念理解度は95%に達しました。更に、このインナーブランディング活動によって、社員満足度は65%から85%と大幅に上昇することができました。
ユナイテッド株式会社様:イベントオープニング・エンディング映像(PROOX制作動画)
インターネットサービスを中心に手がけるユナイテッド株式会社様で公開している動画では、事業内容が大きく異なるグループ会社を集めたイベントのオープニングとエンディングに使用したもので、グループ会社が集まり、互いに結束していることを表現しています。
オープニング、エンディングともにイベントに対する期待感や高揚感を演出するためにテンポの良い動画になるような編集を施しており、イベント全体を通して社員のモチベーションを上げるために活用されました。
高品質なインナーブランディング動画で企業力の底上げを狙おう!
理念やビジョンを浸透させ、従業員が高いモチベーションで業務に打ち込むためのインナーブランディングに成功すると、企業力が大きく向上します。
2022年3月現在、多くの企業がインナーブランディングを行うべく動画を制作していますが、一歩間違えると従業員のモチベーションや意識を下げてしまうので、注意が必要です。
そうならないためにも、クオリティの高いインナーブランディング動画を制作する必要があります。
紹介した事例を参考に、従業員の会社に対する愛着や忠誠が高まるようなインナーブランディング動画を制作しましょう。