今回は2021年6月30日(水)に開催された「動画活用でKDDIウェブコミュニケーションズ社が目指した”ブランディング”とは?」のレポートをお届けします!
KDDIウェブコミュニケーションズ株式会社 パフォーマンスマーケティング部
スピーカー:島田 大地
株式会社プルークス コンサルティング事業部 プランナー
ファシリテーター:土肥 加奈
株式会社プルークス コンサルティング事業部 プランナー
近年、「ブランデッドムービー・ブランディングムービー」が多くの企業で注目されており、皆様がこのワードを聞く機会が増えたのではないでしょうか?
昨今のコロナ禍やビジネス市場の変化(SDGs活動の活発化)に伴い、企業やサービスは「何のために」「なぜ価値を提供しているのか」をアプローチすることでブランドを人格化し、人々の共感を得ることがより重要視されています。
それに伴い現在の動画市場では、プロモーションでないクリエイティブ、すなわち「広告色を排除したクリエイティブ」によってファンを増やす動きがトレンドになっています。
今回はプルークスでブランデッドムービーを制作いただいた、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズのジンジ様をゲストスピーカーとしてお招きし、ブランデッドムービーを制作することに至った背景や、活用方法に関して、当社プランナーの島田・土肥が先日のウェビナーにてお話を伺いました!
今後、ブランデッドムービーの活用をしていきたい!作ってみたい!という方はこちらのウェビナーレポートをご覧いただければと思います!
ブランデッドムービーについて
ブランデッドムービーの目的
近年注目が高まっている、ブランデッドムービーとは一体どのような映像なのでしょうか。 ブランデッドムービー(ブランディングムービー)とは、 ブランディング構築を目的に制作する映像のことをさしています。(出典:https://douga-kanji.com/posts/branded-movie)
上述した通り、ブランデッドムービーの特徴は、企業の世界観や思いなどのメッセージをストーリーで伝え、「見る人の心を動かすことに注力した動画コンテンツ(≒広告色の排除)」であることです。
ブランデッドムービーの役割は下記2点です。
- ユーザーへの認知獲得
- ブランド好意度を高めること
マーケティングファネルでも示しているように、ブランド好意度を高めることは潜在顧客層への認知獲得だけでなく、顕在顧客、購入層、顧客層の全ファネルに影響を与え、そこから購入やファン化につなげる可能性があります。
下記は今回のウェビナーで言及していた、当社の土肥おすすめのブランデッドムービーです。(筆者もこの動画をみて、温かい気持ちになりました・・・。)
この動画をみて、皆様は何を思いますか?
「トヨタ自動車=人生を共に歩むクルマを提供している」というストーリーを心の中で思い描くことができるのではないでしょうか。
そして「トヨタ自動車」の認知状況や車購入の検討状況に関わらず、ブランドへの好感度は高まるのではないでしょうか。
ブランデッドムービーが注目される理由
機能訴求型広告に嫌悪感を抱くユーザーの増加
動画広告市場の拡大に伴い、動画慣れが進み、情報を取捨選択するようになりました。マクロミル社の調査によると、動画広告を見て不快に思ったユーザーが6割以上いるという結果も出ています。 動画視聴が日常に根付いてきたからこそ、ユーザー目線での広告が必要になってくる世の中になりました。
ブランドへの共感を重要視
モノがありふれる世の中で消費者の購買行動が変化しています。プラスして、コロナウィルスの影響や世界情勢の変化などによって、企業やサービスが「なぜ存在しているのか」といった企業自体の存在意義が問われるようになりました。 そのため、企業のサービス・商品のメリットよりも「想いや共感」を重視するようになっています。 企業は今後新しいサービスや商品をただPRするのではなく、ユーザーが「価値観や世界観(コンセプトやブランドパーパス)に共感できるよう働きかけ、共感した顧客を確保する動きが重要になってきています。
ブランデッドムービーを制作するメリット
ブランデッドムービーの制作するメリットは下記2点です。
- 長期的に自社ブランドを想起してもらえる=ファン化に繋がる
- ユーザーの好感を確保することで話題になりやすい=拡散性がある
ファン化に関しては、商品購入やサービス導入をして終わりといった短絡的な効果ではなく、継続的にポジティブな行動を期待できるため、認知から購入層まで影響を与えることができます。 また、共感を呼ぶ内容は、ユーザーがSNSで拡散したり、企業について検索するなど、能動的な行動に繋がりやすく、話題になる可能性が高いです。
ブランデッドムービーの成功法
ブランデッドムービーを成功させるためのポイントは、下記の通りです。
訴求内容:プロダクト訴求(広告色)を排除し、訴求点を1つに絞り込む
演出方法:ユーザーの関心事から企画を考え、感動や共感を与えること
配信方法:適切なタイミングとアプローチで動画を配信すること
株式会社プルークス×KDDIウェブコミュニケーションズ株式会社:対談
続いては、当社プルークスと当社でブランデッドムービーを制作いただいた、KDDIウェブコミュニケーションズ株式会社のジンジ様をお招きして、対談した様子をお届けします! ジンジ様は、KDDIウェブコミュニケーションズ社でマーケティングを担当しており、動画マーケティングに尽力されていらっしゃいます。
実際に制作した動画はこちら
今回制作に至った背景〜ウェブ制作担当者とKDDIウェブコミュニケーションズとの繋がり〜
ジンジ様: 私たちのサーバーは、大手企業から、中小企業や官公庁、広告代理店など、様々なウェブサイトを載せて居ます。 しかし、その前にウェブ制作会社がいて、その制作会社で働く担当者様が私たちのサーバーに安定性、KDDIとしての安心感や信頼などの価値を感じ、CPIのサーバーを選択していただけて居ます。 見方を変えると、私たちがあるのは、日本各地に点在する制作会社の担当者様のおかげとも言えるわけです。
今回、そんな制作会社の担当者様から、言われた言葉があります。
「サーバーが安定して居てユーザーの離脱が減り、クライアントからありがとうと言われました」
という一言が大きなきっかけでした。
元々広告を打つたびに瞬間アクセスが発生してサーバーが重くなって居た環境から、CPIへ引っ越しを提案してくれたのがその担当者様でした。
この時、私たちが提供しているサービスが担当者様からクライアントへ、クライアントからそのウェブサイトを利用するユーザーへ繋がりを感じました。
この繋がりを形にして伝えたい。これが今回の動画の作成に至った背景です。
島田:レンタルサーバーというと無機質なモノとイメージされやすいですが、その背景や熱い想いを伺って、すごく印象に残りました。
また、BtoB系の企業様だと、リスティング広告で顧客獲得を行うケースが多いですが、現在のターゲティング規制などを踏まえると現状の施策では限界があると。そうなると、BtoB企業でも、もう少し上のファネル(=認知層)に向けた何か施策を行なっていかなければならないという課題感をお伺いし、中長期的な施策としてブランデッドムービー制作の検討をされていたことが印象に残っています。
プルークスを選んだ決め手〜コンセプトの理解と動画の役割の定義づけ〜
ジンジ様: コンペを行うにあたり、当社の他事業からの紹介でプルークスさんにお声がけしました。
プルークスを選んだ最大の理由は、先ほどお話しした通り、ユーザーに思いを届けてあわよくば認知を広めていこうと考えて居たので、「共感を作る」というコンセプトに対する理解度が一番高かったのが決め手となりました。
動画の制作自体初めてで分からないことも多かったのですが、プルークスは提案の中で「購買ファネルの中でブランデッドムービーはどのような役割を持つのか」というところから定義づけしてくれました。 他社があくまで私たちが考えていることに対して「この動画を制作するなら予算はこのくらいです」という提案に留まっていたのに対して、一歩踏み込んだ提案だったのと、制作体制や予算感が納得いくものだったので、お願いしました。
効果が見えにくいと言われるブランデッドムービーの社内承認への動き
ジンジ様: CPIの一番の課題って、複数の企業から選ばれている「サーバーの安定性」という最大の魅力が、実はサーバーが落ちてからしか伝わらないところにあります。 しかも安定しているのでCPIを利用しているユーザーですらその魅力を実感しづらい問題があります。
じゃあ、いっそのこと安定性として伝えるのをいったんやめよう。
これまで一緒に歩んできたWeb制作の担当者様から話を聞いて、私たちと彼らの思いを、さらにその先にまでしっかりと届けているというものを形にして認知していこうと考えました。 また、他社がやっていない施策だったので競合差別化が十分にできることを伝えました。 市場で速い=良いレンタルサーバーという認知が広がりつつある中、安定して走り続けるサーバーというのは中々認知されずらい状況です。
一番の承認ポイントは、それでも私たちの事業は成長し続けており、最後には「KDDIさんがダメならもう他のサーバーは無い」とまで言ってくれるクライアントもいて、 そういう価値を伝えたいんです!という熱意で押し切りました。 もちろん数値での想定成果も提示しましたがそれはあくまで補助的なものであり、一番はブランデッドムービーの意味付けや、そこに対する我々マーケティングサイドの思いがしっかり浸透できたということが大きいです。
ブランデッドムービー制作のポイント〜動画与件の言語化とシナリオ制作〜
島田: 動画制作のご相談をいただく場合は、明確に内容が決まっている場合もあれば目的や用途を整理したばかりという段階のものもあります。 KDDIウェブコミュニケーションズ様の場合は、ジンジ様の方であらかじめシナリオを作成頂いている状態でお声がけいただきました。 ただ、完成したシナリオというよりここからどう伝えていくか悩まれていた状態だったので、まず、当社の資料である「ブランデットムービーの基礎知識」をご案内しました。 その上で、今回の目的や狙いを再度整理していただき、シナリオはこちらから提案する運びとなりました。
その上で、目的や狙いを言語化することで、ただいい感じの動画ではなく、しっかりと狙いのあるストーリーになるというわけです。
シナリオ作成に関しては、試行錯誤した部分ではあるのですが、サーバー会社のシナリオは難しいんですね。というのも、サーバー会社の目立つ場面というのはなかなかなく、安定的な動きをしているということは、サーバーを意識しない・感じさせないことなのです。つまり、”「いい仕事」の黒子である”と定義をしました。逆にターゲットである制作会社にとっての「いい仕事」は、クライアントに感謝されること。
その上で、制作会社がクライアントからされる最大限の感謝=「いい仕事」の後に熱く泣ける手紙やメールをもらうことというシーンを連想し、今回のシナリオに至りました。
シナリオ製作時に大事にしていたこと
ジンジ様:実は今の上司は、元々Web制作会社で働いてたんですよね。 その中で体験した事や、直接お客様から聞いた声、クライアントがいて、そのクライアントは何らかの事業を展開していて、その事業の先にもお客様がいるという繋がりの話を聞いた時、 その全てを載せて走っているのがレンタルサーバーというものなんだなと強く感じました。 だからこそ、私たちがバトンを渡す相手と共感できるものを作りたいというのが目的でした。 まずは私自身が共感できて、元ウェブ制作者の上司も共感できる。そういう動画を目指しました。
制作を進行する上で苦労したこと〜イメージの統一と実写動画ならではのキャスト契約〜
ジンジ様:どちらかというと、知らなかったことへの苦労というのがありました。
一つはイメージの統一です。 初の動画制作だったので、絵コンテから完成へのイメージを自分なりにつかんではいたものの、実際に撮影に入っていくと、私自身が考えているイメージとディレクターのイメージにずれがあった場合、そのまま撮影が終わります。 そうなると、その修正は撮影後の編集程度になってしまうので、撮影前にディレクターともっとはっきりとすり合わせをしないと編集が大変になると感じてしまいました。
また、キャスティングについては、契約年数の制限などもあり、撮影ギリギリまで調整することになりました。次があったらもっと速い段階で決断する必要があると反省しました。 今後動画制作を考えている方には是非参考にしてもらえるとありがたいです。
島田:ブランデッドムービーは実写の映像で作るケースが多いです。その際はキャスティングが必要になってくるのですが、広告で使用する場合、キャストの更新期間があるということをご認識いただければと思います。
また、撮影に入ってしまうと、大幅な方向転換ができないので、絵コンテの段階である程度イメージをすり合わせることが重要ですね。また、撮影当日に関してもジンジ様に立ち会っていただきながら撮影を行なったというのもありますので、撮影しながらディレクターとイメージをすり合わせることが重要です。
ブランデッドムービーを制作した成果と今後の展望は?
ジンジ様: 成果としては、公開2ヶ月ほどで再生数15万回を超え、オーガニック完全視聴率 39% と高い数字を記録しました。今後の展望としては、人に不快な思いをさせない動画広告を制作したいということと、今回の映像がとても良かったので、CPIだけでなく他のサービスも横断したブランデッドムービーを制作したいと考えています!
質疑応答
Q1.費用対効果が不明確な部分があると思いますが、どう稟議を通したのか?またプルークス側で行なったことは?
認知層への課題と解決策としてのブランデットムービーが有効であることを熱心に社内説得しました。
オーガニックの指名検索数からのコンバージョン数を試算し、定量的な要素も提示しましたが、あくまでも副次的なものでした。
プルークス側では、提案書を作る際に、どうしてブランデッドムービーが必要なのかや、当社で保有する数値データを踏まえた実績資料を用意しました。
Q2.絵コンテからのすり合わせでイメージが持てるようになるまで、意識したことや工夫したことはありますか?
絵コンテだけでなく、ビデオコンテという絵コンテを紙芝居形式にした映像を作成しました。絵コンテでは伝わりきらない音楽やナレーションのイメージを共有するのに有効です。
また、撮影では必ずクライアントにも立ち合いいただき、演技のチェックを行なっていただきました。
Q3.動画の設置プラットフォームや運用、見せ方についてはどの様に行われたのでしょうか。
・公式YouTubeでのUP
・web広告動画配信
・サービスサイト掲載
サービスサイト掲載は、CPI のサービスへの思いと取り組みを説明するページの下部に動画を掲載します。
顔の見えない商品なので、検討ユーザーとの信頼を繋ぐページとして作成しました。近日公開予定です。
Q4.キャストの契約に関して注意が必要だとのことでしたが、そのあたりを回避するためにアニメーションでブランデッドムービーを作成するという選択肢もあるのでしょうか。
キャストの契約期間を気にしない意味でアニメーションは有効な手段です。
その場合はナレーションやBGMも期間制限の無いものを使用します。
Q5.オーガニック完全視聴率39%とのことですが、 動画全体でどのあたりで離脱する割合が多いのかお伺いしたいです。 ブランデッドムービーは、最後に種明かしするつくりが多いと思います。 「CPI」サービス名をエンディング以外出すシナリオ案もあったと思いますが、 最終ゴールの認知ブランディング拡大に対して、 なぜそのシナリオにされたのかお伺いしたいです。
本件の視聴離脱箇所は具体的に申し上げられませんが、90~120秒を経過すると離脱が多く発生するデータが出ています。しかしブランデットムービーの場合は尺ではなく、内容を優先して制作するのが望ましいです。
今回CPIの種明かしを最後のみにしたのには2点理由があります。
1点目はターゲットがウェブ制作会社という狭い層だったため、やみくもに広く認知をいただく必要がなかったことです。また当初から嫌われない広告を目指していたので物語のなかにCPIの存在を強く押し出す内容は避けました。
2点目はCPIの動画をウェブ広告で視聴した場合、動画のタイトル欄やバナー欄にCPIの広告であることが表示されます。
TVCMですと最後に種明かしになりますが、ウェブ広告の場合はCPIのCMであることを認識した上で視聴できるケースが殆どです。
まとめ
これまで、ブランデッドムービーについてと、実際に制作したKDDIウェブコミュニケーションズ様の生の声をお届けしました。ブランデッドムービーは今後一層注目され、当たり前の動画種別の一つとなっているかもしれません。 ぜひ、ブランデッドムービーにご興味がありましたら、当社にお問い合わせください!